人々から「弁護士とは何者か」と問われる。「弁護士とはプロフェッション(profession)である」と私は答える。重ねて問われる。「プロフェッションとは何か」。プロフェッションを説明するには12、3世紀の中世ヨーロッパに遡らなければならない。
当時、大学ができ始めた。大学には神学と法学と医学の3学部があり、その課程を終えた者が聖職者となり医学と法律の専門家となった。彼らは社会の知識階層を形成し公共に奉仕する役割を担うことになる。
17世紀のヨーロッパ社会は、聖職者と医者と弁護士を3大プロフェッションと呼び、公共の奉仕者として彼らに特別の地位を与えた。医者と弁護士のプロフェッション性は次のとおりである。
①専門的な知識と能力を有し、②公共に奉仕することを目的とし、③利他的にサービスを行う。ただし、1対1の具体的な依頼のもとで。
医者と弁護士は、なぜ、このような利他的な行為ができたのか。彼らは社会的階層の上位にいて生活に不自由がなかったからである。だが、時代は変わる。産業革命をくぐり抜け、資本主義が進展し社会構造が変化する中で、プロフェッションも姿を変えた。医者と弁護士は「職業」となったのだ。
職業となった現代の弁護士プロフェッションの特徴を明らかにしたい。
1. | 公共奉仕を目的とする。利他主義をその基礎として、依頼者と1対1の契約をし、依頼者のためにのみ働く。その一方で、公共の奉仕者として独立性ないし中立性を維持する。この立場にはジレンマがある。 |
2. | 独占的職業である。職業である以上、自らの存立と存続のためのビジネス化は必然となる。つまり報酬をとる。公共奉仕の目的と矛盾する。これを解決するためにビジネス化を抑制する一方で、この職業を独占的なものとし、他からの参入を許さないこととした。弁護士は職業ではあるがビジネスではないというわけである。 |
3. | 特別の教育と訓練を受け、専門知識とスキルをそなえ、国家資格をもつ。 |
4. | 組織をつくり、その組織が高い倫理と厳しい行動規範を会員弁護士に課す。 |
弁護士のルーツはこのように中世ヨーロッパにあった。現代の弁護士もまた公共奉仕を目的としたプロフェッションである。では、日本の弁護士はどうなのか。次回に語ろう。
(小 山 齊)